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ロシアのウクライナ侵攻に伴う日本のエネルギー・食料問題を考える 北朝鮮との関係が良好であれば・・・

ロシアがウクライナ侵攻を始めて1か月近くが経過するが、いまだ、ロシアは軍を引く気配はない。

今後、停戦が進んだとしても、今次ロシアの蛮行は、世界的な非難と制裁の対象となる。これは、ロシアと付き合ってきた国々の貿易にも影響してくる。

また、北朝鮮がウクライナ侵攻で国際情勢が不安定な状況で、ミサイル発射実験を相次いで実施している。

先日発射された火星17については、米国へ着弾する飛距離であり、米国への嫌がらせの意味合いも持つとともに、日本の排他的経済水域内に着弾しており、日本にとっても脅威となっている。

また、ロシアのウクライナ侵攻は、経済面で大きな影響を落としている。一つには「悪い円安」などと表現される加速度的な円安である。これは、日本の「国力低下」という意味合いもあるほか、ルーブルに対しても円安ルーブル高となっており、日銀の「マイナス金利政策」や「指値オペ」がその一端と言われる。これについては、戦争が終わるまで何ともならないのか、戦争が終わったとて下がり続けるのか、岸田政権の施策にも大きく影響されると思われる。

本稿では、エネルギーや食糧の物価上昇、物資獲得戦略と日本が仮に北朝鮮と関係が良好であれば、という観点で見ていこうと思う。

日本は、化石燃料のほとんどを外国から輸入しているが、2020年度の統計で、ロシアから原油を3.6%・約500万㎘、石炭を14.7%・約1500万トン、天然ガスを8.4%・640トン程度輸入している。日本政府は、ロシアからの石炭輸入を制限する方針であり、萩生田経産相は「全廃の方向目指す」とも言及している。

日本では石炭を昔ほど多様していないが、今も、石炭火力発電などを行っている。現在、日本の発電割合は、2020年度現在のエネルギー供給は化石燃料による火力発電が76.3%を占めている。内訳は石油が6.3%、石炭が31.0%、LNG(液化天然ガス)が39.0%となっている。約15%の石炭輸入が滞れば、電力需要にも影響する可能性が考えられ、日本の経済産業省や商社は代替的に入手できる先を探すことになるだろう。

イギリスでは、ガス料金が昨年の約2倍になっているなどとする動画もあり、世界各国でエネルギー価格が高騰している。日本も例外ではなく、日本は円安で輸入額が上がり、更に深刻な問題となるだろう。

ロシアからの禁輸品の輸入代替地を見つけることも大事だが、仮に北朝鮮と交易関係があればと仮定すると、それは日本にとって非常にもったいないこととなる点を改めて考えてみたい。

北朝鮮の主力産品は、石炭と鉄鉱石、レアメタルなどの資源である。仮に、北朝鮮と制裁関係になかった場合、ロシアからの石炭の輸入代替地を北朝鮮とすることができる。

日本との取引関係における北朝鮮との関係上の最大のメリットは、何と言ってもその「距離的近さ」である。近いとそれだけ輸入コストが掛からない。現在は、石油価格も高騰しており、遠隔地からの輸入は運搬コストに反映するからだ。そのため、北朝鮮と取引ができていたら、世界的な資源獲得競争の中、日本は石炭や鉄鉱石など一部資源に限られるかもしれないが、その優位性を見せることができたのである。

北朝鮮との取引がウクライナ問題を発端とする経済的苦境、「悪い円安」からの脱却の糸口になり得たのである。

また、北朝鮮との関係が良好であれば、鉱山の共同経営や鉱山開発権を手に入れていたかもしれず、そうなれば、破格の金額で資源を手に入れるチャンスだったかもしれないのだ。エネルギー安全保障の観点からも、不足する資源を効率的に手に入れるチャンスであったため、今の日朝関係は非常にもったいないと言える。

他方、ウクライナ問題は食料面でも課題が起きている。ロシアが世界第3位の小麦生産国であり、この小麦が世界に流れなくなるため、世界は小麦不足に陥る。また、日本の場合、水産物市場に大きな影響がある。鮭の総輸入額の11%、カニについては53%をロシアからの輸入に頼っている。また。鮭については、ロシア海域での鮭の漁業交渉が難航しており、漁に出られない状態が続いている。ちなみに、「昨年は漁業協力費としてロシアに2.6億円支払っている」などと報じられている。

北朝鮮との取引が行われていれば、カニの輸入面で大きなメリットがあるのだ。北朝鮮は、日本と日本海を挟んで接しており、松葉ガニや間人ガニなどのブランドズワイガニは日本海側の名産品だ。すなわち、北朝鮮産のズワイガニは、ブランドガニの兄弟・親戚みたいなもので、身質が良いのだ。

水産品は鮮度が重要であるが、北朝鮮からのカニは、ロシア産より短時間で日本に持ち込まれるため、鮮度が良く良質であった。1990年代頃から北朝鮮産のカニを見かけたが、水産業関係者の間では低価格で上質なカニであるため、非常に重宝されていた。

他方、イカについても水揚げ量減少と値段の高騰が危惧されているが、北朝鮮と関係が良ければ、これほど高騰することは無かった、という事例をご紹介しよう。

「北朝鮮側の船舶が日本の領海に侵犯し、イカをとるようになったため、イカが高騰している」などとする報道がみられるが、今のイカ不足はそれだけが理由ではないのだ。

イカ専門の水産業関係者の話では、北朝鮮が捕獲するイカの量は、日本からすればそれほど大した量ではないという。日本でイカの漁獲量が減少しただけであれば外国からイカを輸入すれば済むのだが、実は世界の国々でもイカの漁獲高は減少しており、世界的にイカ不足なのである。

では、北朝鮮と関係が良好であっても変わりはない、ということはないのだ。

日本は、2000年初頭まで、北朝鮮とイカ釣りの漁業協定を結んでおり、日本の漁船が北朝鮮海域に侵入して漁業をする代わりに、漁業権の代金を支払ってきた関係がある。

イカは2月頃に韓国沖で生まれ、半年かけて成長とともに北海道まで北上し、そこから日本海を下って韓国沖などで産卵するサイクルを持つ生物で、イカの魚群の移動にあわせて日本の漁船は北朝鮮海域まで足を延ばし、漁をしていたのである。

北朝鮮との関係悪化の影響でこうした漁が出来なくなったが、もしも北朝鮮と関係が良好であれば、水産品の価格高騰を制御できた可能性があり、食料面でも安定供給、価格維持ができた可能性があるということだ。

日本は、拉致問題を解決するまで、北朝鮮との関係を改善することは無いのかもしれないが、認定拉致被害者全員の生存・帰還は生きていたとて年齢的にも難しい人も出てきている。何を持って解決とするか、双方の国のメリットのため北朝鮮と真剣に交渉する必要があろうと考える。

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