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覚醒剤はオウムから?「オウムネタ」の真実とは

公安調査庁作成のオウム真理教に関するポスター(公安調査庁HPより)

「オウム真理教」、それは、90年代に世間を騒がせた史上最悪のカルト集団だ。地下鉄サリン事件などを繰り広げ、多くの人々の命を奪う凶悪な団体。「破壊活動防止法」の解散処分は免れたものの、公安調査庁が後継団体などを「団体規制法」を適用して今も監視を続けている。
そんな「オウム」の存在を耳にしたのは、地下鉄サリン事件の発生から20年以上が経った一昨年の冬のことだった。
首都圏某所のビルの一室に集まったのは、身分も職業もバラバラな男女。心身をむしばむ「薬物」という魔物との腐れ縁を断ち切るため、薬物乱用者の更正施設が主催するセミナーに集まっていた。
 参加者の1人だった中年男性に、20年以上に及ぶ覚醒剤中毒者としてのキャリアを聞くうちに 「オウムが密造したという触れ込みでしばらく出回ったんだ。シャブとLSDがあってオレはシャブを1回だけやった。最高だったね」と漏らしたのだ。当時の快感がよみがえってきたのか、男は恍惚の表情を浮かべていた。
 1990年代から2000年代初頭にかけて市場に出回ったとされる「下がガンガンに元気になるS(=覚醒剤)」「1キロ50万とかでヤクザに卸していたらしい」|などの「オウムネタ」。巨大組織の運営資金の獲得手段として、違法薬物の売買が行われた可能性も指摘されるなど、いまだに都市伝説めいた真偽不明の噂が流れ続けている。その理由の一つと考えられるのが、麻原こと松本智津夫が82年に偽薬を製造・販売して薬事法違反で逮捕されたことがあるほか、サリンやVXガスを生成して殺人事件を起こすなど、麻原・オウムと違法薬物は縁が深い面もあるからだ。
 しかし、オウムに関連する一連の事件の発生当時、違法薬物事件の捜査に携わっていた警視庁OBはこう証言している。
 「巷間いわれている覚醒剤などの『オウムネタ』にまつわる噂のほとんどがガセだ。当時の捜査では、オウムが覚醒剤やLSDなどの違法薬物の製造や密売に関わっていたという確たる証拠は出なかった。売人がネタの売り口上にオウムを利用したというのが真相だろう」
 ただ、教団内で「イニシエーション」と称されていた修行の一環としてLSDなどの幻覚剤が使用された形跡があったことは捜査で明らかになっており、「LSD以外にも覚醒剤が修行で使われた可能性は否定できない」という。
 さらに気になる証言もある。絶対匿名を条件に語るのはさる広域組織の関係者だ。
 「オウムからシャブを仕入れていたという話は聞いたことがないが、オウムにシャブを卸していた組織があるのは間違いない」
 その証言を裏付けるように、オウムの背後には常に裏社会の影がちらついていた。接点となっていたのは、事件の渦中に暴漢に襲われて死亡した教団幹部の1人、村井秀夫氏だった。
 「村井は教祖の麻原(彰晃)に近い高位の地位にあり、組織運営の全権を握っていた。表も裏も含めた〝全て〟。教団本部があった静岡を拠点にしていた後藤組との折衝役を務めたのも彼だ。違法薬物が教団内でどのように扱われていたかも当然知っていただろう」(先の警視庁OB)
 また、オウムは、ロシアにも浸透しており、ロシアンマフィアとの関係も噂されていた。
すべての闇を抱えて冥界へと消えた村井氏。ついに光が当たることがなかったその闇が具象化したものが「オウムネタ」という〝妖怪〟だったのかもしれない。

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