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元北朝鮮外交官 単独インタビュー 「餓死者が出た」と報じる今の北朝鮮を語る②  北朝鮮関係者の生の声「苦難の行軍を2度経験することに」

 朝鮮日報2022年7月25日付は、「北朝鮮で餓死者が続出…労働新聞も『共和国が非常局面』」と題する記事を掲載し、労働新聞などを引用し「北朝鮮でコロナ問題に伴う中朝などの国境を封鎖したことが原因で食料事情が悪化し、北朝鮮市民が飢えに苦しんでいる」旨報じた。
 当メディア担当者は、北朝鮮の元外交官である金東水・国家安保戦略研究院客員研究委員(元北朝鮮研究センター所⻑)に取材を申し込み、今の北朝鮮の現状などについて見解をお聞きした。


 改めて、金東水博士の経歴に触れておくが、1983年から1998年までの間、北朝鮮外務省で勤務し、国連担当をしていたほか、スイス、ノルウェー、イタリアの北朝鮮大使館で勤務。1990年代中半から後半の「苦難の行軍」期にはイタリアの北朝鮮大使館で勤務され、国連食糧農業機関(FAO)などの担当をしており、北朝鮮に対する食糧支援を取り付ける活動などに取り組んでこられた。

 前回、金博士は、「韓国銀行が発表した『2020年北朝鮮経済成長率推定結果』によると、昨年の北朝鮮の国内総生産額(GDP)は前年比で4.5%減少しており、北朝鮮はどの国よりも新型コロナウイルス感染症の打撃を受けた国と分析している」などと、北朝鮮における新型コロナウイルスによる打撃が大きいことを指摘した。
また、「今後、台風など自然災害まで襲ってきた場合、大規模な餓死者が発生した90年代末の危機的状況が再燃しかねず、金正恩体制の動揺につながる可能性が非常に高い」などと、今後の自然災害が重なれば金正恩政権の安定性に影響する可能性があると言及した。
 ちなみに、北朝鮮が新型コロナウイルスの発症を発表した本年5月、金東水博士に連絡をし、北朝鮮におけるコロナの感染状況について話を聞いた。その際、金博士は、「北朝鮮は過去に、新型インフルエンザなどの『流行り病』が流行した場合、国内で感染拡大していることを報道などせず、内密にWHOなどに支援依頼をして事態の収拾を図ってきた。しかし、今回、新型コロナウイルス感染拡大を発表したのは、新型インフルエンザの流行被害をはるかに上回る被害が出ており、従前の解決方法では収集がつかなくなったため、公表に踏み切った」、「今後、北朝鮮は、日米韓から支援の声が掛かってもこれには応じず、WHOなど国際機関からの援助を求めて奔走するだろう」などと説明していたので、ご参考までに紹介しておく。

以下、引き続き、金博士へのインタビュー内容である。

<90年代の「苦難の行軍」と現状の違い>
 金正恩は昨年4月の、朝鮮労働党第6回細胞秘書大会の閉会の辞を通じて「党中央委員会から始め、各政党組織、殿堂の細胞秘書がより一層強固な『苦難の行軍』をすることを決心した」と明らかにした。
 金正恩氏が言及した「苦難の行軍」は、先述の90年代半ばの深刻な食糧難と大きな違いがある。前者は北朝鮮社会全体の経済的困難だったとすれば、後者は北朝鮮内部の全般的な人民経済の実質的破綻と同時に人民の政治思想的動揺が発生したことによるものだ。

<北朝鮮関係者が語る現状の一端など> 
 国境地域の消息筋は「中朝間の密貿易で流入していた食糧と物資も大幅に減り、北朝鮮の市場運営が難しいほどだ」と話した。 市場が止まれば、一般住民の生命が脅かされる。
 また、北朝鮮支援団体代表は「北朝鮮事業を展開する実業家及び米国側の話は皆同じだ」とし「『苦難の行軍』が再び来た、北朝鮮の学者たちも『私たちの人生の中で苦難の行軍を2度体験することになった』と話している」と伝えた。
 さらに最近、中国が年末の共産党大会を控え、中朝国境の検疫を強化しており、北朝鮮の食糧難は悪化し続ける見通しだ。


 次回、危機的状況を打破するための、北朝鮮の対策について金博士の見解をご紹介する。

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