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福岡県の4億円強奪事件から見る犯罪が発生する一要因 裏社会の繋がりと依頼者の関係

 2017年4月、福岡・天神で3億8千万円が強奪された事件が発生したことを覚えている人は少ないだろう。2020年以降、世間はコロナで大騒ぎとなり、過去の大事件など気に留めてられなかった。しかし、当時は、大々的に報道され、複数名の逮捕者が出た事件であり、マスコミも大騒ぎした。そんな福岡の事件について、面白い話を手に入れた。

「タタキ、やりませんか」
 男のもとに、こんな誘いがきたのは2017年2月上旬のことだった。男は関東に拠点を置く指定暴力団の組員。話を持ち掛けてきたのは付き合いのある別組織の組員だった。

 「LINEで『いいネタがあるんだけど』ってメッセージがきてピンときた。シノギのことだって。会って内容を聞いてみたら確かにおいしい話だった」

 待ち合わせた駅前のカラオケ店で切り出されたシノギの内容は「タタキ」、つまり「強盗」である。
 狙うのは「金」。しかも、「成功率は100%に近く、バレるリスクはほとんどない」というのだ。

 「内通者を通じて、いつ、誰が、どんな方法で運ぶか、という情報はこちら側に筒抜け。つまり、〝出来レース〟のタタキだよ。他にも声を掛けていたようで、『やりたい』ってヤツは結構多いようだった」

 提示された成功報酬の金額で折り合いがつかず、男が実行犯に加わることはなかったが、それから約2カ月後の4月20日。テレビ画面を眺めていた男は思わず声を挙げた。

 「やりやがった」
 報じられたのは、九州最大の繁華街、福岡市中央区天神の路上で発生した強奪事件のニュースだ。みずほ銀行福岡支店で現金を引き出した男性(29)が路上で2人組の男に襲われ、現金3億8000万円が奪われた。その後、現金は金塊の取引のために引き出されていたことが判明。その翌日には、東京・銀座の路上で自営業の男性(44)が3人組の男らに4000万円を奪われる事件が発生した。消えた4000万円はやはり、金の取引に絡む資金だったという。福岡と東京で続発した事件を見て男は確信を深めた。

 「金絡みのタタキが重なったのは偶然じゃない。2件ともオレのところに話があった手口と瓜二つ。実行犯は、オレのようにリクルートされて作られた即席の強盗団とみて間違いないだろう」

 彼の元に回ってきた「シノギ」の情報は、裏社会のネットワークを通じて複数の暴力団関係者が共有するものだったという。

 こうした裏社会のつながりが犯罪行為につながっているところ、福岡の事件は「出来レース」とのことで、被害者の関係者が依頼した可能性が指摘されている。この事件に関しては、複数名が逮捕されているが、被害者の関係者は逮捕されておらず、「出来レース」の裏付けはされていない。

 その昔、警察関係者から「警察の仕事は、0か1である。すなわち、逮捕できるか、できないか、となり、どちらにしても結果が出る。そのため、結果の出ないこと、継続的な外国関連の情報を収集することなどは苦手なのだ」と話を聞いたことがある。

 今回の事件は、2016年7月に発生した6億円の金塊強盗事件ともリンクしていると報道されているが、警察組織も「事件の実態を暴くことが難しい」「逮捕者が複数名出ているから、被害者と加害者の構図が出来上がっていて、それで満足」と判断したのかもしれない。


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