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北朝鮮外交のエキスパートが語る 日本人妻の問題が日朝交渉の鍵だ

拉致被害者5名の帰国を実現した日朝首脳会談から20年以上が経過をした。拉致問題は進展せぬままで、20年以上が経過をし、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記はミサイルの発射を繰り返している。日本政府の対北朝鮮政策は失敗したと断言しても過言ではないだろう。

日本政府は話し合いの場すら作ろうとしない。なぜ、日本政府は北朝鮮と対話のテーブルに着かないのだろうか。

ある、北朝鮮外交のエキスパートといわれる人物Aは語る。Aは訪朝経験もあり、北朝鮮外務省の役職者とも定期的にやり取りをする人物だ。

「拉致問題発覚後、日本社会には激しい北朝鮮への怒りが吹き荒れた。日本政府は米国と協調をして、対北朝鮮制裁を強く実行するようになるが、日朝関係は悪化の一途に突き進む。それが何か成果を出したか。答えはノーだ。日本政府は対北朝鮮外交において方針転換をしないといけない」

スーツのよく似合うAは日本政府が実行する北朝鮮外交の強硬路線を批判し、融和路線を訴える。その上で、具体的な政策提言を日本政府に要請してきたという。

「私もそうだが、北朝鮮との極秘交渉を積み重ね日朝首脳会談を実現した田中均元外務省局長、国会の北朝鮮による拉致問題等に関する特別委員会等で安倍政権の対北朝鮮強硬路線を批判してきた有田芳生元参議院議員、超党派の日朝国交正常化推進議員連盟の衛藤征士郎会長などは、北朝鮮との外交をする上で拉致問題と共に、もう1つの日朝間に存在する人道問題を進展させることを提案している」

険しい表情でAが話す、日朝間に現存するもう1つの人道問題。それは北朝鮮で暮らす日本人妻の問題だ。日本で多くの人々が知っているのは、拉致問題だと思うが、拉致被害者と同じように日本に帰国できないでいる日本人たちが存在するのである。

日本人妻とは、1959年から1984年の間におこなわれた帰国事業により、北朝鮮へ渡航した日本人だ。帰国事業で在日コリアン男性と結婚した日本人妻が約7千人いた。多くの日本人妻は数年で日本に帰国できるという話で北朝鮮へ行ったが、日本と北朝鮮とは国交がないために日本人妻は日本へ戻ることができなかった。帰国できると思って北朝鮮で生活していた日本人妻は、深い悲しみと絶望的な感情に襲われたはずだ。

が、1991年に始まった日朝国交正常化交渉により里帰り事業の実施が決定。日本人43人が一時帰国を果たした。しかし、2002年に開催された日朝首脳会談において拉致問題が発覚してからは日本政府は対朝鮮敵視政策を実行。その一環で、日本人妻の里帰り事業は中止となった。それからは長い期間、日朝間の日本人妻の問題は行き詰まり状態となる。

けれども、事態は一転し、2014年にスウェーデンのストックホルムでおこなわれた日朝政府間協議にて『日朝ストックホルム合意』がされる。このことをきっかけに、北朝鮮で暮らす残留日本人と日本人妻が9人いることが判明した。

北朝鮮から日本人妻は、日本メディア向けの記者会見をし、日本への帰国と日朝国交正常化交渉を訴えた。日本メディア向けの記者会見の背景には、日本と友好関係を進めたい北朝鮮の意向も垣間見える。また、その日本人妻の家族もその願いに共鳴。日本国内で暮らしている日本人妻の家族は、日本政府、外務省等に北朝鮮政府との交渉再開、日本人妻の里帰り事業再開、日本人妻の一時帰国実現を要請した。

現在、北朝鮮の日本人妻は皆、90歳という高齢となっている。いつ死んでもおかしくはない。日本政府が拉致問題と同じく、早急に動かなければならない人道的問題なはずだ。であるのにも関わらず、日本政府は日本人妻の問題について取り組まないでいる。

このことについて、Aは憤る。

「長らく日本政府には拉致問題ファーストという立場がある。拉致問題を進展させないまま、北朝鮮と他の問題を話し合いをしても、拉致被害者家族やその支援団体から激しい晒されるからだ。北朝鮮に利用されたっていう、批判だ。でも、これはよく考えれば、的を得ない批判だ。拉致とは違うケースだが、拉致被害者と同じく北朝鮮から帰国できない日本人妻の問題に取り組むことが、なぜ北朝鮮に利用されたと批判されなければならないのか。北朝鮮で暮らす日本人妻が帰国すれば、家族がどれだけ嬉しいことか。また、日本政府にとっては拉致問題の交渉を再開させるきっかけになるかもしれない。日本政府にとって、大きなメリットしかないんだけどね。日本人妻の問題が日朝交渉の鍵であることは間違いない。やるか、見殺しにするか。どちらかだ」

日本政府は一刻の猶予もない日本人妻の問題に、このまま沈黙を貫くのか。

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