MENU

沖縄米軍基地の闇 タックスヘイブン

在日米軍専用施設の約70%が集中する「基地の島」である沖縄には、さまざまな「法の抜け穴」が存在し、悪用する者もまた後を絶たない。


 そのひとつが地元の不良たちの間で「非課税商売」と呼ばれるシノギである。
 「『タックスヘイブン』と言っているやつもいますよ。まあ、カラクリがわかれば確かに言い得て妙なネーミングだと思いますね」


 こう言って笑うのは本島中部に住む40代の男だ。
 本島某所で飲食店を経営するかたわら、地元組織の人間や近年、沖縄の裏社会で存在感を高めつつある「半グレ」連中らとも関わりを持ち、沖縄経済の「表」と「裏」両方の事情に精通している。
 取材に応じた男はシノギの中身について声を潜めてこう明かした。


 「いわゆる『輸入品の横流し』です。アメリカ本国から沖縄にある米軍基地に送らせた荷物を基地の外に持ち出すんですよ。そんなことか、と思われるかもしれませんが、なかなかどうして、これがいいシノギになるんです」


 沖縄を含む全国に点在する在日米軍基地には飛行場や訓練場といった軍施設のほか、日用品や飲食物を販売する「PX」などと呼ばれる商業施設なども併設されている。広大な敷地の中には、家族を連れて赴任する米兵のための学校や映画館、ジムなどもあり、米兵とその家族が生活するための経済圏が形成されている。


 そこは、日本の領土内にありながらにして国内法が適用されない「フリーゾーン」であり、異国の地にある基地内で米兵はさまざまな恩恵に浴している。


 「基地内では日本の法律は適用されないから、当然、税金もかからない。だから、PXで販売されている商品はすべて免税品となり、相場よりもかなり安い値段で買える。電気代やガソリン代なども割安で、生活にかかるコストは基地外に比べて半分以下に抑えられているのが実情です」(米軍基地の事情に詳しい沖縄の地元記者)


 米兵は基地内にとどまらず、米兵が日本国内で犯罪を犯した際の米軍の専属的裁判権を認めた日米地位協定を盾に事実上の「治外法権」を有する存在となっている。
 米兵が有しているそうした「特権」に目を付けたのが沖縄の一部の不良たちだった。


 前出の男はこう囁く。
 「あまり知られていないことですが、在日米軍基地が所在する『住所』は日本ではないんです。たとえば沖縄最大の嘉手納基地の『住所』はカリフォルニア州に設定されています。そのため、在日米軍基地に赴任した米兵宛ての荷物は米国内の郵便料金で届く仕組みになっています。だから、米兵と通じるルートがあれば輸入品がかなり安く入手できるんです。もちろん、本来支払うべき関税を免れる『関税飛ばし』ですから、明らかな違法行為ではありますがね」


 男によると、沖縄にはこうした「横流し品」を専門に扱う業者も存在し、自身の店舗で堂々と違法行為で調達した〝商品〟を販売しているのだという。
 「移設問題が取りざたされている普天間飛行場近くのある商店は、『基地からの横流し品を取り扱っている』と地元で知られていました。

横流し品を入手するために米兵に直接依頼することもありますが、米兵の彼女や親族を通じて頼むケースもある。最近、このシノギをする不良連中の間で『割がいい』と評判なのが、クロムハーツですね。向こうで10万円で売っているアクセが日本では18万円にはなる。そんなにかさばることもないから、米兵にも頼みやすいんです。なかには米兵と組んで、クサ(大麻)やチャリンコ(コカイン)といったクスリを密輸させるやつもいるって話です」


 沖縄では今年6月、大麻の所持や譲渡にかかわったとして高校生を含む未成年の男女計23人が逮捕される事件が明らかになり、違法薬物の低年齢層への蔓延が問題となった。


 こうした違法薬物の流通ルートの一端にも、捜査当局の網にかかりにくい米兵の存在が見え隠れしている。
「6月の事件でも、逮捕された高校生の通学先は米軍基地が集中する本島中部の学校に集中していた。米兵との接触が多い地域で違法薬物が出回っているのは偶然ではない。地元の不良と結託した米兵が違法薬物の供給元となっている可能性は非常に高い」(前出の地元記者)
「日米同盟」という美名の下に覆い隠された領主国「米国」と属国「日本」との歪な主従関係。日本最南端のストリートに生きる者たちは、その矛盾をも生きるための糧としているのだ。

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

コメントは日本語で入力してください。(スパム対策)

CAPTCHA